明治時代に小間物店として創業
佐藤酒店は明治25年(1892年)5月、小間物店として開業し、かんざしや髪飾り、おしろいや紅などのほか、日用品を扱っていました。同時に、創業当時からしょうゆの醸造も行ない、大きな樽が並ぶ蔵がありました。時代が昭和になると、玉島・寄島地区の造り酒屋から酒を仕入れ、店で量り売りをするようになりました。当時は荷車で玉島に行き、樽酒を積んで帰っていたそうです。昭和初期の真備地区は、明治時代まで船運のあった小田川に沿って旧山陽道(西国街道)が走り、宿場町・矢掛につながる賑やかな場所でした。なかでも佐藤酒店のある、現在の県道286号線沿いの箭田地区は街の中心をなす通りで、「箭田(やた)銀座」と呼ばれていました。隣には映画館があり、芝居やファッションショー、日本舞踊の発表会などが開催されました。また夏にはそこら中にホタルが舞い、縁台で将棋をする人々の和やかな姿も見られました。
時代を経ても、常に人の集う場所
事業を酒類の小売販売に絞ったのは、昭和62年(1987年)6月。しょうゆの醸造を、『とら醤油株式会社(倉敷市酒津)』に委託し、蔵を新店舗に建て替えました。平成12年(2000年)には、地元の吉備真備公の名前を戴いたオリジナルの日本酒、「本醸造 吉備真備」と「純米醸造 吉備真備」を企画。醸造は『ヨイキゲン株式会社(総社市清音)』で、少し辛口で、あと味の良い酒を毎年、製造・販売しています。
平成30年7月豪雨で、店舗は2階の床まで浸水しましたが、令和2年8月23日より新店舗で営業しています。佐藤酒店は以前から、夕方になると知人や近所の人たちが酒のアテを持参し、集まる場所でした。浸水時は家族を含め23人が店の3階に避難し、豪雨災害直後は復興ボランティアの人たちも、仮店舗兼事務所であるプレハブの建物に集まり、食事をしながら話をしていました。時代は変わっても、いつも人の集う場所であり続け、地域にとって温かく貴重な存在です。
(2020.11更新)
さわやかな暮らしに“い草の試み”
いぐさのかご「いかご」製造販売 【取扱店舗】 くらしのギャラリー本店、 白神商店(TEL:086-422-0323)