ござの出荷拠点、西阿知
岡山県南部はかつてより米と並んでイ草の栽培が盛んで、西阿知地区でも高梁川沿いにイ草製品の製造業者が多数軒を連ねていました。西阿知駅はござの出荷拠点として賑わい、ここから全国、さらには海外へと出荷されていたそうです。
いち早く土産物品として
その西阿知で明治30年(1897年)から一貫してイ草製品の製造を続けているのが今吉商店です。創業者は今吉忠蔵氏。当時は上敷や畳表の製造が主でした。その後、輸出用のランチョンマットを手がけ、昭和40年代に倉敷が観光地として全国的に有名になった頃には「テーブルセンター」という名で土産物品として商品転換をはかります。現在では全国向けの問屋売りはやめて、倉敷でのみの販売に特化しているとか。
主な商品としては、テーブルセンター、ランチョンマット、コースターなどイ草を使った実用工芸品全般。イ草は調味料などをこぼしても染みになりにくく、テーブル用品としての親和性は高いそうです。
イ草の文化を継承していきたい
そのイ草は全て倉敷で栽培されたものを使用しています。かつては日本一の生産量を誇った岡山のイ草も今ではごく一部でしか栽培されていませんが、今吉商店では植え付けから収穫まで生産地に人を派遣して、そのノウハウ獲得に余念がありません。ほかにも、織りに使う糸の撚り(より)や柄を作るために必要な木型の製作など、以前なら専門業者が分業していた作業まで自社で行うことが増えてきました。これは周辺の専門業者がいなくなる中で、何とかその技術を継承していきたいという4代目今吉正行氏の強い思いの表れです。
今後については、市場のニーズをくみ上げながらイ草の特徴を生かした様々な商品開発を続け、形は変わってもイ草の文化を長く伝え続けていくことが願いだそうです。