創業者の言葉で
美宝堂は、倉敷センター街に店を構える老舗のメガネ店で、その創業は大正4年(1915年)にさかのぼります。創業者は島田小三郎氏で、当時はメガネだけではなく万年筆も扱っていました。ちょうど公文書の筆記が筆からペンに代わる時代で、まだ高価だった万年筆もよく売れたそうです。お店の方はおかみさんに任せ、島田氏は商品を持って行商に飛び回っていたとか。やがて戦後になり、創業者の「これからの商売は専門性が重要」との言葉でメガネ専業に転換し、今に至ります。
職人としてメガネに向き合う
現在のお店を取り仕切るのは、3代目の島田博氏。大阪で修行を積み、以降は独学で習得し続けてきた技術力には定評があります。実は国内ではメガネの修理までできる技術者が少なくなっているそうで、島田氏の元には全国から修理依頼のメガネが毎日10~15本も届きます。また、請われて技術指導に出張することもしばしば。「職人としての仕事が好き」と語る島田氏は、店内の一角にある作業場で日々メガネに向き合います。
どんな要望にも応える
主な客層は中高年の方が多いそうですが、最近はファッションに敏感な若い人がアンティークなメガネを求めてわざわざやって来ることもあります。「メガネの流行は繰り返す」という考えの下、長い商売の間に廃番になった品も処分せずに大切にストックしてあることでそういったオーダーにも応えてきました。今では入手困難な品も購入できるとあって口コミで話題が広がり、全国にファンも増えています。過去には映画の小道具用としての古いメガネをオーダーされたこともあるとか。要望に合う商品が在庫にない時はあらゆるルートで探し、それでも見つからない場合は自分で製作してまで対応します。
商売で大切にしていることは「自分のメガネのつもりで商品を扱うこと」。客の立場に立ち、安価な商品でも高級品でも平等に大切に扱うことが創業以来の社訓となっています。