倉敷薄荷の歴史
薄荷(ハッカ)はシソ科の多年生植物で、日本に自生するミントは和種ハッカ、ペパーミントやスペアミントなどハーブとして知られるものは洋種ハッカとも呼ばれています。海外と同じように日本でも昔から薬や香料として利用されてきました。日本で本格的に栽培されるようになったのは岡山出身の僧・栄西が1191年(建久2年)に中国から持ち帰ったのがきっかけだという説もあります。
1817年(文化14年)には備中門田村の秋山熊太郎が薄荷草を水蒸気で蒸留して植物精油として産業化し、利益を上げたとも伝えられています。また1936年(昭和11年)には、倉敷市西富井に全国で2ヵ所しかない薄荷の試験場ができたことから、昭和20年代には薄荷の出荷量で北海道・北見に次ぐ全国第2位を誇っていました。しかし、昭和40年代後半になると殆ど栽培されなくなり、その後、岡山県内の薄荷生産は途絶えることとなりました。
幻の品種「しゅうび」
倉敷の薄荷試験場で開発されたにも関わらず、薄荷産業の衰退時期と重なって世に出ることがなかった幻の品種「しゅうび」の株を発見し、かつての倉敷の伝統産業を復活させようと、2012年(平成24年)に倉敷で薄荷の栽培を再びスタートさせました。「しゅうび」はペパーミントやスペアミントなどの洋種ハッカと比べてメントール成分をより多く含んだ和種ハッカで、ツンとくるきつい香りではなく甘さを含んだやさしくまろやかな爽やかさを持った薄荷です。倉敷では無農薬で栽培し、これを「倉敷薄荷」と名付けて、倉敷での栽培量を増やしていくためにさまざまな商品を開発し、その普及に努めています。
無農薬でナチュラルな倉敷薄荷
倉敷薄荷は自前の蒸留装置で水蒸気を大量に使って蒸留し、オイルとして抽出されます。こうして抽出されたオイルは、10度以下の低温になるとメントール成分が結晶化するので、高含有であることがよくわかります。蒸留したエキスは「倉敷薄荷エッセンシャルオイル」(3ml、5ml)に商品化して販売しています。
しゅうびの甘く爽やかな生葉がたっぷり入った「倉敷薄荷モヒート」や「倉敷薄荷ソーダ」が倉敷国際ホテルのレストラン『ウイステリア』で、季節限定で提供されています。このほか、毎月20日は「ハッカの日」として、倉敷薄荷陳列所でサシェ(匂い袋)やアロマオイルスプレーのワークショップなどを行うこともあります。(要事前予約)
(2020.12更新)