倉敷ガラスの創生
使いやすく、見て美しいガラス製品として全国に愛好者が多い倉敷ガラスは、小谷真三氏と長男の栄次氏の親子二人の手でのみ作られる口吹きガラス製品の総称です。
その起源は昭和39年(1964年)。元々自身の工房でクリスマスツリーの飾りとしてガラスの玉を作っていた小谷氏の元に、民芸関係者からガラスコップ制作の依頼が持ち込まれたことに始まります。今のように情報も豊富でない時代、小谷氏は手探りの状態から試行錯誤を繰り返し、なんとか独自の技法でコップを完成させました。
そのコップが当時の倉敷民藝館館長の外村吉之介に気に入られ、それが契機となって本格的に作られるようになっていったのです。当初は工房が水島にあったことから「水島ガラス」と呼ばれていましたが、後に外村氏によって「倉敷ガラス」と命名されました。その後、コップだけでなく瓶やワイングラス、鉢など、その作品は常に進化を続け、小谷氏の物作りに対する姿勢とともに世界的に認められるまでになります。
民芸の精神を体現した作品
現在は粒江に移転した工房を中心に、盛岡でも制作活動が行われ、長男の栄次氏も加わってそれぞれの味で伝統を守り続けています。
倉敷ガラスの特徴は、全ての工程を自身の工房で一人で行う「スタジオ・グラス」と呼ばれるスタイルから生み出されるマネのできない造形と「用即美」、すなわち用の追及から自然に生まれる美しさです。真三氏は、恩人である外村氏から教わった「健康で、無駄がなく、真面目で、威張らない」という教訓を非常に大切にしており、作られる作品は厚みがあって丈夫で長持ちし、奇をてらわない使いやすい形をしています。同時に、自然で素朴でありながら、温かみのある美しさも感じさせます。
日本郷土玩具館での扱い
日本郷土玩具館では倉敷ガラス創生当初よりその作品を扱い、現在でも展示・販売を行っています。その魅力は、当館併設のギャラリーで開催される展覧会でも味わうことができます。
(2019.11更新)
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