天日で干すのが最高
イ草の県内主要産地である倉敷市西阿知地区には、今でも季節の風物詩である「花ござの天日干し」が、岡山三大河川の1つである高梁川の堤防で行われています。
この下流一直線に伸びる堤防道路は南北に伸びており、その東斜面を利用して日光を十分に当てることで、織り上げたイ草に含まれる湿気を取ります。イ草は色づけされてから織るため、そのままにしておくとカビが生えてしまいます。そこで、天日干しをするのですが、乾燥機を使うよりもイ草の芯まで乾かすことができるので、日光が最適だそうです。
薫風の吹き始める5月になると、色、柄ともにさまざまな花ござが広げられ、土手を華やかに彩ります。
手話で「岡山」を意味するかたちは、イ草を使って畳を織る動作からきていると言われます。それだけ古くから地元に根差したイ草製品。花ござの製造会社も、昭和30年頃には西阿知地区だけで200社程あったそうです。しかし、それから10年も経つと、安い中国製品におされて、業者の数は徐々に減っていきました。
現在は、この地区で数軒の業者により、伝統が守られています。それでも毎年最盛期には、朝から100畳分ほどの花ござを土手に広げて、干しています。土手の草が暖かい日差しによって芳しさを放つ中、花ござが日光をいっぱいに浴びている昔ながらの風景を見に、高梁川下流の土手まで足を運ばれてはいかがでしょうか。
(2013.09)